SN2反応とは?|反応機構・背面攻撃・立体反転をわかりやすく解説
SN2反応とは?
SN2反応は、求核剤と基質の2分子が同時に関与して進行する求核置換反応です。(→ 求核性とは?)
速度式が2分子依存するため SN2 と呼ばれます。
- S = Substitution(置換)
- N = Nucleophilic(求核)
- 2 = 二分子反応(速度式に2分子が関与)
基本的な反応形式
反応基質としてハロゲン化アルキル(R−X)が反応し、求核剤 (Nu−)から求核攻撃を起こることで脱離基 (X−)が外れる反応です。
反応の結果として、−Nuと−Xが置き換わった生成物が得られます。

反応形式はSN1反応と変わりませんが、反応機構が異なるため、SN1とSN2は区別されます。
反応機構

SN2反応は求核攻撃による結合形成と脱離基の解離が同時に起こります。
今回のような結合形成と脱離が同時に起こる反応形式を協奏反応と言います。
協奏反応という言葉は中間体を形成する段階的な反応と対比的に用いられます。
SN2反応 → 協奏反応
- 中間体は存在しない
- 遷移状態で結合が同時に形成・切断
- 付加過程が律速
背面攻撃と立体反転:ワルデン反転
SN2は協奏的に反応が進行しますが、背面攻撃 により求核攻撃が起こる点が特徴的です。
この背面攻撃により
立体反転(Walden反転) が起こります。

立体反転が起こると光学異性体がある場合、光学異性体は反転します。
背面攻撃の理由:分子軌道で解説
ハロゲン化アルキルの反応点はLUMOをみればわかります。
SN2反応において、ハロゲン化アルキルは求電子剤としてはたらくため、LUMOにおいて電子を受け入れると考えます。

ハロゲン化アルキルのLUMOは、C−X結合のσ*結合にあたる軌道であり、C−Xの反対側に軌道が張り出します。
一方で、脱離基側はC−I結合のσ結合に当たる軌道であり、電子が埋まった軌道のため、求核攻撃できません。
このため、背面攻撃により反応することが有利になります。
背面攻撃をする理由
- 脱離基側 → 占有軌道 (σ (C−X))
- 背面側 → LUMO (σ*(C−X))
LUMOとの軌道の重なりが最大になるのが背面方向
反応速度
SN2の反応速度
SN2の反応速度は、求核剤濃度(Nu−)、基質濃度(R−X)に比例します。
求核剤濃度と基質濃度の2つが反応速度に関与することがSN2の2の意味です。
SN2反応の進行しやすい条件
基質の影響
SN2は求核攻撃が律速のため、立体障害に非常に敏感です。
立体障害の小さなハロゲン化メチルの反応性が高く、置換基が増えると反応性が下がります。
基質の反応性
CH3−X (メチル) > 1級 > 2級 > 3級
求核剤の影響
SN2では求核置換反応なので、求核性が高いほど反応が速いです。
求核性の強さは実測するのは難しいですが、大まかな傾向は下記の通りです。
求核性の強さの傾向
- 同じ元素:求核性 ≒ 塩基性度
- 同族元素:高周期が強い
- 負電荷した求核種 > 中性の求核種
求核剤の反応性
I− > Br− > Cl− > F−
脱離基の影響
SN2は、協奏的機構で進行するため、良い脱離基の場合に遷移状態のエネルギが下がり、反応が促進されます。
脱離基の優劣
- 弱い塩基は脱離能に優れる
- 安定な陰イオンになるほど脱離能に優れる
脱離基の優劣
TsO− > I− > Br− > Cl− > F− > OH−
溶媒効果
SN2は溶媒により強く影響されます。
SN2は、プロトン性溶媒(−OH, −NHを含む溶媒)は反応性に劣り、極性非プロトン性溶媒で速くなります。
プロトン性溶媒では、負電荷をもつ求核剤(Nu−)を安定化するため、反応活性が下がります。
極性非プロトン性溶媒では、逆に求核剤のエネルギーを押し上げるため、求核性が上がり反応性が上がります。
溶媒による反応性
CH3CN > DMF > DMSO > H2O > MeOH
SN1とSN2はどちらで進行するのか?
SN1とSN2は、どちらもハロゲン化アルキルの求核置換反応であり、実際の反応では2つの反応機構が拮抗して進行します。
求核置換反応の反応機構選択に関しては、下記の記事で解説しています。
まとめ:SN2反応
協奏反応
結合の形成と切断が同時に起こり、中間体は生じない
背面攻撃 → 立体反転(Walden反転)
LUMOが背面に張り出すため、R体↔S体が反転する
反応速度は求核剤と基質の両方に依存
反応のしやすさを決める主な要因
- 基質:立体障害が小さいほど有利
(メチル > 1級 > 2級 > 3級) - 求核剤:求核性が高いほど速い
- 脱離基:弱い塩基ほど脱離しやすい
- 溶媒:極性非プロトン性溶媒で反応性が上がる
