酸・塩基の強さの尺度∣pKaとは?小さいほど強い理由と決まり方を解説
pKaとは、酸の強さ(プロトンの外れやすさ)を表す指標です。
値が小さいほど強い酸であり、反応の進みやすさを判断する上で非常に重要です。
有機化学では、pKaを使うことで
- どちらが酸として強いか
- どの方向に反応が進むか
を定量的に予測することができます。
酸・塩基とは?:Brønsted-Lowryの定義
酸・塩基とはそもそも何なのでしょうか?
Brønsted -Lowry(ブレンステッドローリー)の酸・塩基の定義が最も一般的に用いられる定義です。
Brønsted -Lowryの酸・塩基
ブレンステッドローリーの定義では、酸・塩基は下記のように定義されます。
ブレンステッド酸・塩基の定義
酸:プロトン(H+)を与える物質
塩基:プロトン(H+)を受け取る物質
例えば、塩酸 (HClの水溶液)中では、HClが酸として働き、水が塩基として働きます。
この結果得られたCl–やH3O+はそれぞれ塩基や酸として働くことができます。
そのため、Cl–をHClの共役塩基、H3O+をH2Oの共役酸といいます。

補足:プロトンとは?
プロトンとは原子核を構成する粒子である陽子のことを意味する言葉です。
しかし、有機化学ではプロトンというと一般的には、H+のことを指します。
中性の水素原子から一電子の取り除くと陽子だけが残るため、H+のことをプロトンと呼ぶのです。
補足:Lewis酸・塩基とは?
酸・塩基には、より広い定義もあります。
- ルイス酸:電子対を受け取る
- ルイス塩基:電子対を与える
詳しくは下記の記事で解説しています。
pKaとは?(酸の強さの指標)
pKaの定義
重要ポイント
- pKaが小さいほど強い酸
- pKaが1違うと、酸の強さは約10倍違う
pKaは酸の強さ(プロトンの外れやすさ)を表す指標です。
酸(HA)は水中で次のように電離します。
このときの平衡定数を酸性度定数Kₐといいます。
このKₐが大きいほど、酸はより電離しやすく「強い酸」です。
ただしKₐは値の範囲が非常に広いため、通常は対数をとったpKaを用います。
塩基の強さはどう表す?
塩基の強さは、共役酸のpKaで判断します。
塩基の強さはプロトンとの結合の強固さと言い換えることができるため、共役塩基(H+と塩基が結合したもの)の解離しやすさ(=pKa)で判断できます。
➢ 共役酸のpKaが大きいほど、その塩基は強い
例:OH⁻ と Cl⁻ の比較
- OH⁻の共役酸:H₂O(pKa = 15.7)
- Cl⁻の共役酸:HCl(pKa = -7)
→ 共役酸のpKaが大きいOH⁻の方が強い塩基
酸の強さは何で決まるのか?
酸の強さは、プロトンが外れた後の「共役塩基の安定性」 で決まります。
有機化学では主に次の3つが重要です。
(1) 電気陰性度
電気陰性度が高い原子ほど、負電荷を安定化できる
→ 安定な共役塩基
→ 強い酸
(2) 共鳴(電子の分散)
負電荷が複数の原子に分散できる
→ より安定
→ 強い酸
(3) 誘起効果
電気陰性度の高い原子や置換基が電子を引く → 負電荷が安定化
→ 強い酸
酸の強さを具体例で確認

エタノール vs 酢酸(共鳴)
- エタノール:共鳴なし → pKa ≈ 16
- 酢酸:共鳴あり → pKa ≈ 4.76
エタノールと酢酸の共役塩基はそれぞれ、エトキシド、酢酸イオン(アセテート)です。
エトキシド、酢酸イオンはどちらも電気陰性度が大きい酸素原子上に負電荷がのるため比較的安定性が高いです。
また、酢酸イオンでは酸素の高い電気陰性度に加え、共鳴構造による安定化があるためエタノールと比べより強い酸性(pKa=4.76)となります。
➢ 電気陰性度の高い酸素上に負電荷
➢ 共鳴のため、酢酸の方が強い酸
酢酸 vs アセトン(共鳴の質)
- 酢酸:負電荷は酸素上に分散
- アセトン(エノレート):酸素と炭素に分散
→ 炭素は電気陰性度が低く不安定
→ アセトンの方が弱い酸(pKa ≈ 19)
アセトンの共役塩基はアセトンエノレートです。
酢酸イオンの共鳴構造と類似の形で共鳴し、炭素原子と酸素原子の上に負電荷がのります。
酢酸イオンでは、共鳴構造の2つの構造で高い電気陰性度をもつ酸素原子に負電荷がのります。
アセトンエノレートでは、共鳴構造の一方では、酸素原子上に負電荷がのり、もう一方では炭素上に負電荷がのります。
このため、安定化効果は酢酸イオンに劣ります。
アセトンのpKaは19.3であり、酢酸(4.76)と比較して酸として弱くなります。
しかしながら、C-H結合のpKaとしては小さく(メタンのpKa〜50)共鳴による安定化が大きく寄与していることがわかります。
➢ どちらも共鳴のため安定化
➢ 電気陰性度のため、酢酸の方が強い酸
➢ アセトンもC-Hのなかでは強い酸
pKaの使い方(重要)
pKaは反応の向きを判断するのに使います。
基本ルール
強い酸 → 弱い酸へH+が移動
反応性の目安
- pKa差が大きいほど、反応は一方向に進みやすい
- 一般に、差が数単位以上あると生成物側が有利になる
この関係は溶媒や条件に依存します。
代表的な化合物のpKa一覧
以下に代表的なpKaを示します。
| 化合物 | 酸 | 共役塩基 | pKa |
|---|---|---|---|
| 塩酸 | HCl | Cl⁻ | -7.0 |
| 硫酸 | H₂SO₄ | HSO₄⁻ | -3.0 |
| オキソニウムイオン | H₃O⁺ | H₂O | 0 |
| 酢酸 | CH₃COOH | CH₃COO⁻ | 4.76 |
| フェノール | C₆H₅OH | C₆H₅O⁻ | 10.0 |
| 水 | H₂O | OH⁻ | 15.7 |
| エタノール | CH₃CH₂OH | CH₃CH₂O⁻ | 16.0 |
| アセトン | CH₃(C=O)CH₃ | エノレート | 19.3 |
| アセチレン | HC≡CH | HC≡C⁻ | 24 |
| アンモニア | NH₃ | NH₂⁻ | 38 |
| エタン | CH₃CH₃ | CH₃CH₂⁻ | 50 |
まとめ
- pKaは酸の強さ(プロトンの外れやすさ) を表す
- pKa小さいほど強い酸
- 塩基の強さは共役酸のpKaで判断
- 酸の強さは共役塩基の安定性で決まる
参考
Bordwell pKa Table
マクマリー有機化学(上)東京化学同人



