共鳴とは、1つの分子を単一の構造式で表せないときに、複数の構造(共鳴構造)で表現する考え方です。
➢ これらの構造を共鳴構造と呼びます。
これらの構造は実際に行き来しているわけではなく、 実際の分子はそれらの平均(共鳴混成体) として存在します
共鳴の本質は、電子の分散(非局在化) です。
➢ 電荷や電子が分散するほど、分子は安定になる
共鳴効果は、σ結合を通じた電子の偏りによる安定化(誘起効果)とは区別されます。
誘起効果とは?+I効果・−I効果と共鳴効果の違いを分子軌道で理解 - まなびのいずみ |
すべての分子で共鳴が起こるわけではありません。
➢ p軌道が連続して重なっている(π共役している)必要があります
p軌道が途切れていたり、軌道がねじれいている場合には共鳴することができません。
二重結合・孤立電子対・空のp軌道が隣接していれば、共役している可能性が高いです。
共役とは、p軌道が連続して電子が広がることを指す“構造の性質”です。
一方、共鳴とは、その広がった電子分布を1つの構造式で表せないために用いる“記述方法”になります。
| 観点 | 共役 | 共鳴 |
|---|---|---|
| レベル | 実在の構造 | 描写方法 |
| 対象 | p軌道の連続性 | 電子の非局在の表現 |
| 起こる場所 | 分子の骨格 | 構造式の書き方 |
| 物理性 | 物理現象 | 記述モデル |
共鳴構造の描き方には規則があります。
この規則を守らなければ、適切な共鳴構造が描けず、正しく安定性の議論ができません。
実際の分子の電子分布は共鳴構造の平均をとると言いましたが、すべての共鳴構造が同じ重みを持つわけではありません。
取りうる共鳴構造のなかでも、影響に差が生まれます。
つまり
➢ 安定な構造ほど寄与が大きい
➢ 現実の分子は「より安定な構造に近い」
と言えます。
➢ 隣にπ結合があると電荷は分散できる
➢ 共鳴によって安定性が大きく変わる
共鳴安定化は、p軌道の重なりによる電子の非局在化によって生じます。
一方で、
➢ σ結合からの電子供与(超共役)によって安定化が起こる場合もあります。
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共鳴は、分子の安定性を通じてさまざまな性質に影響します。
酸の強さは、共役塩基の安定性によって決まります。
共役塩基にのった負電荷が共鳴によって分散すると、共役塩基が安定になり、酸は強くなります。
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反応は「中間体の安定性」に強く依存します。
特に、カルボカチオンを経由する反応(SN1反応)では、カルボカチオンが安定であるほど反応は進みやすくなります。
➢ 共鳴で安定化される中間体ほど生成しやすくなり、反応速度が上がる
ベンゼンのように、環状に共役した分子では特に強い安定化が生じます。
共鳴構造は、実際の分子を表しているわけではありません。
そのため、共鳴構造間で平衡関係はありません。
実際の分子においては、共鳴構造で表された分子が最初から平均化されたものが性質として現れます。
共鳴構造は安定性の高い構造の影響が大きく現れます。
そのため、すべての構造が同じ重みにはなりません。
仮にすべての構造が同じ重みとすると、無理やり作った安定性の低い共鳴構造の影響が大きくなり、分子の実態を反映できません。
逆に言えば、考えうる共鳴構造のなかから安定性の高いものを恣意的に選んでいるとも言えます。
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