ベンゼンなどの芳香族はしばしば、
ため安定だと説明されます。
しかし、
芳香族性を示すためには(4n+2)π電子系であることが必須です。
この規則は、ヒュッケル則と呼ばれています。 (→ ヒュッケル則とは?)
では、なぜヒュッケル則が成立するのでしょうか?
この記事では、
に関して、分子軌道法を用いて解説します。
この記事を読む前に、分子軌道法に関してあらかじめ学習することをお勧めします。
分子軌道法(MO法)入門|結合性軌道・反結合性軌道をわかりやすく解説! - まなびのいずみ |
HOMOとLUMO|分子の反応性・色・安定性を読み解く - まなびのいずみ |
芳香族化合物では、通常の共役系には見られない特別な安定化が観測されます。
代表例としてベンゼンが知られています。
芳香族性については、以下の記事で詳しく解説しています。
芳香族性とは?|定義・成立条件・性質を構造的に整理 - まなびのいずみ |
芳香族性を考えるうえで特に重要なのが、
(4n+2)π電子系が安定化する
というヒュッケル則です。
では、なぜ(4n+2)π電子だけが特別なのでしょうか?
芳香族化合物は、対応する非芳香族な共役系と比較して、大きく安定化していることが知られています。
例えば芳香族の代表例であるベンゼンは、孤立した二重結合3本をもつシクロヘキサトリエンとして予想される場合よりも、実際には大きく安定です。
この余分な安定化は共鳴エネルギーと呼ばれ、芳香族性を定量的に表す指標として扱われます。
特に、ヒュッケル分子軌道法(HMO法)を用いて評価した共鳴エネルギーは、
Hückel Resonance Energy(HRE)
と呼ばれます。
HREについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ヒュッケル共鳴エネルギー(HRE)とは?∣芳香族性をエネルギーで評価する理論指標 - まなびのいずみ |
芳香族性はしばしば、環状に共役しているから安定と説明されます。
しかし実際には、
単に環状共役しているだけでは芳香族にはなりません。
ヒュッケル則に見られるように、同じように環状共役をしている場合でも、4nπ電子系では、かえって不安定になります。
例えば、
も環状共役系ですが、
シクロブタジエンは反芳香族になり不安定化し、シクロオクタテトラエンは反芳香族になるのをさけるため、平面構造をくずします。
では、なぜ(4n+2)π電子が特別なのでしょうか?
ベンゼンを例に鎖状分子から環状分子になる際の安定化を確認してみましょう。
まず、鎖状共役系である1,3,5-ヘキサトリエンを考えます。
これを環化してベンゼンにすると、末端p軌道同士が新たに相互作用できるようになります。
軌道が相互作用する場合、
を生みます。
この相互作用によって、
軌道のエネルギー準位が変化します。
その結果、
します。
これにより、(4n+2)πでは、全体のエネルギーが低下し、大きく安定化します。
4nπ電子系では、(4n+2)πで確認した相互作用と逆の作用がおこります。
代表例がシクロブタジエンです。
ベンゼンの場合と同様にブタジエンの環化を考えます。
シクロブタジエンでは、
します。
その結果、
全体のエネルギーが増大し、強い不安定化が起こります。
これが、4nπ系で生じる反芳香族性による不安定化の正体です。
芳香族が安定な本質的理由は、
にあります。
つまりヒュッケル則は単なる暗記事項ではなく、
分子軌道の対称性と電子配置から導かれる安定化条件
として理解することが重要です。
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