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異核二原子分子の分子軌道入門|CO・HFで理解

異核二原子分子(CO・HF・NO など)は、同核二原子分子とは分子軌道の形や電子分布が大きく異なります。

異核二原子分子の分子軌道は、CO・HF・NO などの理解に必須ですが、
同核二原子分子との違いが分かりにくい分野でもあります。

しかし多くの場合、同核との違いが曖昧なまま個別の分子を覚えてしまいがちです。

この記事では

  • 同核二原子分子との違い
  • 異核二原子分子の軌道の特徴
  • σ軌道の相互作用(s–p相互作用)

を体系的に整理します。

同核二原子分子との違い

異核二原子分子の最大の特徴は

原子軌道のエネルギーが異なること

です。

この違いにより、分子軌道の性質が大きく変わります。

項目同核二原子異核二原子
原子軌道エネルギー同じ異なる
分子軌道対称非対称
電子分布均等偏る
極性なしあり

異核二原子分子の本質:エネルギー差

異核二原子分子では、異なる原子同士の原子軌道が組み合わさって分子軌道を形成します。
このとき、原子の種類によって原子軌道のエネルギーが異なります。

電気陰性度が高い原子では、一般に価電子軌道のエネルギーが低くなります。

原子軌道エネルギーの比較(第2周期)

  • F > O > N > C の順に低い
  • HFではFの軌道が低い
  • COではOの軌道が低い

このエネルギー差があるため

  • 分子軌道が非対称になる
  • 電子密度が偏る
  • 極性が生じる

といった特徴が現れます。

異核二原子分子の軌道の特徴

エネルギー差によって、異核二原子分子では非対称な軌道混合が起こります。

項目同核二原子異核二原子
混合比50:50非対称
電子分布均等偏る
結合性軌道中央低エネルギー側に偏る
反結合性軌道中央高エネルギー側に偏る

軌道混合の大きさ(一般論)

分子軌道の混合の大きさは、主に原子軌道のエネルギー差で決まります。

軌道混合が強くなる条件

  • 軌道間のエネルギー差が小さい
  • 軌道の対称性が同じ
  • 軌道の重なりが大きい

逆に

  • 軌道間のエネルギー差が大きい
    → 軌道混合が弱い

この違いが、CO と HF の性質の違いにつながります。

※実際の軌道混合の強さは、エネルギー差だけでなく軌道の対称性と空間的重なりにも依存します。

σ性軌道の相互作用(s–p相互作用)

二原子分子では、σ対称性をもつ軌道同士の相互作用がエネルギー順序に影響を与えることがあります。

σ対称性をもつ軌道同士は、エネルギーが近い場合に混合します。

s–p軌道間の相互作用は、同核二原子分子で解説した相互作用と同じものです。

異核二原子分子のs–p軌道相互作用

同核二原子分子では、分子が中心に対して左右対称になるため、σ*2s と σ2p は相互作用できません。

一方、異核二原子分子では左右対称性が崩れるため、両者が相互作用し、非対称な分子軌道が形成されます。

つまり

同核では影響しなかった σ*2sが、異核では軌道構造に直接影響します。

これが両者の本質的な違いです。

具体例

本記事では、異核二原子分子の代表的な2例に関して確認します。

CO:非対称な軌道混合の典型例

特徴

  • 軌道間のエネルギー差は中程度
  • 軌道が強く混合する
  • 電子密度が偏る

HF:HA型の代表例

特徴

  • エネルギー差が大きい
  • 軌道混合が弱い
  • 軌道がほぼ独立

まとめ

異核二原子分子のポイント

  • 原子軌道エネルギーが異なる
  • 電気陰性度の違いが目安になる
  • 分子軌道が非対称になる
  • 電子が片側に偏る
  • 軌道混合の大きさは軌道間のエネルギー差で決まる
  • σ軌道のs–p相互作用がエネルギー順序に影響する
  • σ*軌道にも非対称な相互作用が現れる

この基本を理解すると

  • COの逆極性
  • HFの弱い軌道混合
  • NOの電子配置

なども自然に理解できるようになります。

まずはCOの解析から読むのがおすすめです。

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PuriPuri

化学メーカー勤務のプロセス屋さん。 阪大修士卒。お家の調理担当。

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