SN1反応とSN2反応の違いとは?|選択性・機構・見分け方を整理

求核置換反応では、同じハロゲン化アルキルでも SN1反応SN2反応 のどちらで進むかが条件によって変わる場合があります。

この違いは主に次の要因で整理できます。

  • 基質構造(置換基の数や共鳴構造)
  • 求核剤の強さ
  • 溶媒の性質
  • 脱離基の優劣

求核置換反応の全体像を、反応の選択性、SN1とSN2の違いから整理しましょう。


求核置換反応とは?

求核置換反応は、炭素に結合した脱離基が外れ、そこへ求核剤が結合する反応です。

一般式で表すと、

R–X + Nu⁻ → R–Nu + X⁻

となります。

この反応には2つの代表的な反応経路があります。

  • SN1反応:脱離基が先に外れ、カルボカチオンを経由して進む
  • SN2反応:求核剤の攻撃と脱離が同時に進む

この2つは、反応機構が違うだけで求核置換反応の結果得られる生成物は同じです。

では、SN1とSN2はそれぞれどのような条件で選択されるでしょうか?

SN1とSN2の選択性を決める要因

求核置換反応の反応選択性は主に

  • 基質構造(置換基の数や共鳴構造)
  • 求核剤の強さ
  • 溶媒の性質
  • 脱離基の優劣

が要因となって決まります。

基質による違い:立体障害と超共役

第3級ハライド:SN1有利

第3級炭素では、周囲にアルキル基が多く立体障害が大きいため、求核剤が背面攻撃しにくくなります。

そのためSN2反応は起こりにくくなります。

一方で、脱離基が抜けて生成する第三級カルボカチオンはアルキル基の電子供与によって比較的安定です。

その結果、SN1反応が有利になります。

メチル/第1級ハライド:SN2有利

メチル基質や第1級炭素では、立体障害が小さく求核剤が攻撃しやすい構造です。

一方、メチルカチオンは不安定であり、SN1反応は起こりにくくなります。

そのため、SN2反応が有利になります。

第2級ハライド:条件次第

第2級炭素は第1級炭素と第3炭素の中間の性質のため、SN1とSN2の両方の反応を取り得ます。

SN2が有利な条件

  • 強い求核剤
  • 極性非プロトン性溶媒

ならSN2寄りになりやすく、

SN1が有利な条件

  • 弱い求核剤 (SN2が不利)
  • 極性プロトン性溶媒

ならSN1寄りになりやすくなります。

共鳴で反応性が変わる基質(置換基効果)

通常、第一級ハライドはSN2反応が有利です。

しかし、ベンジル位やアリル位では共鳴安定化により、SN1反応も進みやすくなります。

基質による求核置換反応の活性まとめ

求核剤の強さ:SN2のみ影響

SN2反応では、求核攻撃が律速段階に関わるため、強い求核剤ほどSN2反応を促進します。

強い求核剤

  • OH
  • SH
  • CN

SN1反応では、律速段階が脱離基の解離であるため、求核剤が弱くても進行可能です。

弱い求核剤

  • H2O
  • ROH
  • NH3

求核剤の塩基性による脱離の競合

SN1反応では、強い塩基性を持つ求核剤を用いる場合、脱離反応が競合する可能性があります。

そのため、中性または酸性で反応する場合が多いです。

溶媒の影響

プロトン性溶媒:SN1有利

プロトン性溶媒は脱離基や中間体のカルボカチオンを安定化しやすく、脱離過程が進行しやすくなります。

そのため SN1反応を促進します。

プロトン性溶媒の例

  • メタノール
  • エタノール

極性非プロトン性溶媒:SN2有利

非プロトン性極性溶媒では、求核剤が不安定化されるため求核性があがり、SN2反応を促進します。

極性非プロトン性溶媒の例

  • DMSO
  • DMF
  • アセトン
  • アセトニトリル

脱離基の優劣:SN1, SN2ともに影響

SN1, SN2ともに、脱離基が安定に外れられるほど、反応は進みやすくなります。

一般に、塩基性が弱い脱離基が脱離しやすい傾向があります。

脱離基の優劣

I > Br > Cl > F

典型例での反応選択性

反応例 (1)

求核置換反応の例1

基質:3級ハライド
溶媒:プロトン性溶媒
脱離基:Br
求核剤:H2O (弱い求核剤)

立体障害の大きい基質
プロトン性溶媒
SN1で進行

反応例 (2)

求核置換反応の例2

基質:メチルハライド
溶媒:極性非プロトン性溶媒
脱離基:Br
求核剤:OH(強い求核剤)

立体障害の小さい基質
SN2で進行

反応例 (3)

求核置換反応の例3

基質:アリル位置換, 2級アルコール
溶媒:プロトン性溶媒
脱離基:−OH2+ (良い脱離基)
求核剤:Cl

アリル位でカチオンを安定化
プロトン性溶媒
SN1で進行

迷ったときの判断フロー

  1. まず基質を見る
  • 第三級 → SN1有力
  • メチル・第一級 → SN2有力
  1. 第二級なら条件を見る
  • 強求核剤 + 非プロトン性溶媒 → SN2寄り
  • 弱求核剤 + プロトン性溶媒 → SN1寄り

まとめ

  • SN1とSN2の選択性は 基質構造・求核剤・溶媒・脱離基 で決まる
  • 第3級ハライドはSN1、メチル・第一級基質はSN2が基本
  • 第2級ハライドでは条件判断が重要
    ➢強い求核剤と極性非プロトン性溶媒はSN2寄り
    ➢弱い求核剤とプロトン性溶媒はSN1寄り
  • 求核置換反応での置換基効果
    ➢SN1反応:電子供与基で活性化
    ➢SN2反応:電子供与基、電子求引基ともな活性化

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