有機反応

E1反応とは?|カルボカチオンを経由する脱離反応を解説

E1反応とは?

E1反応とは、基質1分子の分解が律速段階となる脱離反応です。

E1反応では、まず脱離基が外れてカルボカチオンが生じ、その後β位水素が失われてアルケンを与えます。

  • E = Elimination(脱離)
  • 1 = 律速段階に1分子のみ関与

SN1反応と同様に、カルボカチオンの安定性が反応性を左右する反応です。

基本的な反応形式

E1反応は、ハロゲン化アルキルからHXが脱離し、アルケンが生成する反応です。

反応形式自体はE2反応と同じですが、反応機構は異なります。

  • E1反応:二段階反応
  • E2反応:協奏的反応

反応機構

E1反応は、段階的機構で進行します。

Step1:脱離基の脱離(律速段階)

まず脱離基(Br⁻, Cl⁻, H₂O など)が外れ、カルボカチオンが生じます。

不安定な中間体を生成する段階であるため、この過程が律速段階になります。

Step2:β水素の脱離

続いて、溶媒分子や共存する弱塩基がβ位水素を引き抜くことで、二重結合が形成されます。

E1反応の特徴

  • 二段階反応
  • カルボカチオン中間体を経由
  • 脱離過程が律速
  • 塩基は反応速度に関与しない

位置選択性:ザイツェフ則

E1反応では、ザイツェフ則に従った生成物がえられます。

ザイツェフ則によると、一般に置換度の高いアルケンが優先して生成します。

このため、カルボカチオン中間体から複数のβ水素が脱離可能な場合、より安定なアルケンが選択的に生成します。

E1反応が起こりやすい条件

E1反応の起こりやすい条件は、SN1反応と類似しています。

基質の影響

カルボカチオンが安定な基質ほど進みやすくなります。

一般に、

3級 > 2級 > 1級

の順で反応しやすくなります。

これは、アルキル基が誘起効果や超共役によってカルボカチオンを安定化するためです。

※ β水素がない場合には脱離反応は進行しません。

脱離基の影響

脱離過程が律速となるため、脱離基の脱離しやすさが反応速度に大きく影響します。

脱離性の良さは、SN1SN2での順番と同じです。

脱離基の優劣

  • 弱い塩基は脱離能に優れる
  • 安定な陰イオンになるほど脱離能に優れる

脱離基の優劣

TsO > I > Br > Cl > F > OH

塩基の影響

E1反応では、脱離段階が律速のため、塩基によるβ水素の引き抜きは反応性に影響を与えません。

強塩基を用いる場合には、E2反応が進行しやすくなります。

SN1反応との競合

E1反応はSN1反応と同じくカルボカチオン中間体を経由するため、同一条件下で競合しやすい反応です。

一般に、

  • 低温ではSN1(置換)が優位
  • 加熱条件ではE1(脱離)が優位

になりやすくなります。

実際には、両者が混合して進行する場合もあります。

また、共存する求核剤・塩基の性質がE1とSN1の反応制御において非常に重要になります。

詳しくはこちらの記事で解説しています。

E1とE2のどちらで進行するか?

E1とE2は、反応機構が異なるため基質によっては異なる生成物が選択的に得られます。

そのため、反応条件によりE1とE2のどちらが進行するか非常に重要です。

溶媒条件・塩基の強さ・基質構造などによって、E1とE2のどちらが優先するかが決まります。

項目E1E2
機構段階的協奏的
中間体ありなし
塩基弱塩基でも進行可強塩基が必要
立体要求小さいアンチペリプラナー必要

E1とE2の選択性に関しては、こちらの記事で解説しています。

E1反応の代表例

t-ブチルブロマイドをエタノール中で加熱すると、E1反応により2-メチルプロペンが生成します。

まず、脱離基であるBrが外れてt-ブチルカチオンが生じます。

続いて、溶媒分子などがβ水素を引き抜くことで、アルケンが形成されます。

この反応では、第3級カルボカチオンが比較的安定であるため、E1反応が進行しやすくなります。

まとめ

E1反応は、カルボカチオン中間体を経由する一分子脱離反応です。

  • 二段階で進行する
  • カルボカチオン安定性が重要
  • 第3級基質で進みやすい
  • ザイツェフ則に従いやすい
  • SN1反応と競合する

進行しやすさは、安定なカルボカチオンを形成できるかによって決まります。

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PuriPuri

化学メーカー勤務のプロセス屋さん。 阪大修士卒。お家の調理担当。

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