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NOx対策まとめ|燃料改善・燃焼改善・排煙脱硝の違いを整理

NOxとは?

NOxとは、窒素と酸素の化合物である窒素酸化物の総称です。

主に、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)を指します。

これらは、工場の燃焼炉や自動車のエンジンなど、高温燃焼プロセスで空気中の窒素と酸素が反応して生成されます。大気中に放出されると、光化学スモッグや酸性雨の原因となる大気汚染物質です。

NOxの排出防止技術

NOxの排出防止技術は、発生を抑制する技術(NOx抑制技術)と、発生後に除去する技術(排煙脱硝技術)に大別されます。前者は燃焼改善燃料改善によってNOxの生成を抑えるもので、後者は排煙脱硝によってすでに生成されたNOxを除去するものです。

1)燃料改善

燃料改善においては、燃料中に含まれる窒素含有量を減らしたり(脱窒)、窒素含有量の少ない燃料を用いることでフューエルNOxの低減を行います。

2)燃焼改善

燃焼改善においては、燃焼条件を調整し、NOxの生成そのものを抑制します。サーマルNOxの抑制ともに条件によってはフューエルNOxの発生も抑制することができます。

3)排煙脱硝

排煙脱硝においては、燃焼後の排ガスからNOxを除去します。燃焼改善技術だけでは排出基準を満たすことができない場合もあるため非常に重要な技術です。

NOxの対策の大分類

  • 燃料改善:燃料中の窒素の少なくすることでNOx生成を抑制
  • 燃焼改善:燃焼条件によりNOxの生成そのものを抑制
  • 排煙脱硝:燃焼後の排ガスからNOxを除去

燃料改善によるNOx抑制

燃料改善には、燃料転換燃料脱窒の2つのアプローチがあります。

燃料転換

使用する燃料を窒素含有量の少ない燃料に転換することでフューエルNOxの低減を行います。

一般に窒素含有量は、

固形燃料>液体燃料>気体燃料

の傾向があるため液体燃料や気体燃料を用いるとフューエルNOxを低減することができると考えられます。

窒素含有量の傾向

固形燃料>液体燃料>気体燃料

燃料脱窒

使用する燃料の窒素含有量を減らして使用します。ガソリン、軽油、灯油、重油などは硫黄分の品質が定められており、石油由来の燃料は硫分の除去を目的として水素化精製により精製がされます。

この際同時に窒素分を除去がされるため、ある意味で石油由来の燃料は基本的に脱窒操作がされたものと考えることもできます。

各種燃料の硫黄分・窒素酸化物の含有量

燃料区分種類窒素硫黄
固体燃料
(質量%)
石炭0.7~2.20.3~2.6
コークス0.6~1.40.2~1.0
液体燃料
(質量%)
原油0.03~0.340.1~3.0
灯油0.0005~0.010.001~0.2
軽油0.004~0.0060.03~0.50
A重油0.005~0.080.2~3.0
B重油0.08~0.350.2~3.0
C重油0.2~0.40.2~3.0
気体燃料
(g/m³N)
液化天然ガスtrtr
液化石油ガスtrtr
石炭ガス(粗)1~91.5~7
石炭ガス(精)0.02~0.50.05~0.7
高炉ガスtrtr

燃焼改善によるNOx抑制

燃焼管理による抑制手法は、サーマルNOx生成の主要因である高温を避ける、または酸素濃度を低く保つことに焦点を当てています。主な手法は以下の通りです。

低NOxバーナー

火炎の形状や空気の混合を工夫し、燃焼温度を下げたり、酸素濃度を低く保ったりすることでNOxの生成を抑制します。

二段燃焼法

燃焼を二段階に分けてNOxの生成を抑えます。

第一段階で理論空気量の80〜90%の酸素供給で燃料を燃焼させます。その後、第二段階で空気を追加して完全に燃焼させます。

急激な燃焼を抑制することで局所的な高温域の出現を防止すると同時に、酸素濃度の低下によってNOxの生成を抑制できます。

サーマルNOxとフューエルNOxの両方に効果が見られますが、不完全燃焼が起こりやすい点で注意が必要です。

排ガス再循環燃焼(EGR)

排ガス再循環燃焼 (Exhaust Gas Recirculation, EGR)は排ガスの一部を燃焼用空気と混ぜて燃焼炉に戻すことでNOxを抑制する方法です。

排ガスは空気と比べ酸素濃度低く不活性なため、燃焼温度が下がり、NOxの生成が抑制されます。

サーマルNOxの抑制に特に効果的であり、フューエルNOxへの効果は限定的です。

低空気比燃焼

低空気比燃焼は、供給する空気量を理論空気量より少なめにして燃焼させる方法です。

酸素濃度が下がるため、NOxの生成が抑えられます。

特にサーマルNOxの抑制に効果があり、条件によってはフューエルNOxも低減できます。ただし、空気量を減らしすぎると不完全燃焼となり、COなどが増えるため注意が必要です。

二段燃焼法は空気供給を時間的に分ける方法であるのに対し、低空気比燃焼は全体として空気量を減らす点が異なります。

排煙脱硝技術

排煙脱硝技術は、燃焼後の排ガス中に含まれるNOxを除去する技術です。

排煙脱硝プロセスは、すでに生成されたNOxを物理的・化学的に除去するため、燃焼改善技術だけでは対応が難しい場合や、厳しい排出基準を満たすために不可欠な技術です。

排煙脱硝技術の分類

排煙脱硝技術は大きく乾式と湿式に分けられます。乾式のアンモニア接触還元法がほとんどの場合に使用されています。また、活性炭法は脱硫と脱硝が同時に実施可能で事業用発電ボイラーなどに採用があります。

分類プロセス
乾式アンモニア接触還元法(選択的)
無触媒還元法
活性炭法
湿式酸化還元法

以降、採用が多い乾式の排煙脱硝技術に関して説明します。

アンモニア接触還元法

アンモニア接触還元法は最も一般的に使用される排煙脱硝技術です。アンモニア接触還元法では還元剤を用いてNOxを無害な窒素(N2)と水(H2O)に分解します。

高い除去率(80~95%)を有し、火力発電所や大型ボイラーに広く導入されています。

触媒をしようすることで、300~400℃と比較的低い温度でNOxを除去することができます。

無触媒還元法

無触媒還元法は、アンモニア接触還元法と同様にアンモニアを還元剤として使用しNOxを還元しますが、触媒を使いません。

触媒を使用する代わりに、排ガスの温度が900〜1,100℃の高温下でアンモニアを直接噴射することでNOxを還元します。

触媒が不要なため設備費は安価ですが、温度管理が難しく、脱硝効率はアンモニア接触還元法に比べて劣ります。

活性炭法

活性炭法は、活性炭の多孔質構造を利用してNOxを物理的に吸着・除去する技術です。

この方法は、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)も同時に除去できる利点があります。

活性炭に吸着された物質は定期的に脱着・再生処理が行われます。比較的小規模な設備や、SOxとNOxの両方を同時に除去したい場合に採用されます。

まとめ

NOx対策は「発生前に抑える方法」と「発生後に除去する方法」に分けられます。

【発生前に抑える方法】
・燃料改善:燃料中の窒素を減らしフューエルNOxを抑制
・燃焼改善:燃焼温度・酸素濃度を制御しサーマルNOxを抑制

燃焼改善の代表例
・低NOxバーナー
・二段燃焼法
・排ガス再循環燃焼(EGR)
・低空気比燃焼

【発生後に除去する方法】
・排煙脱硝:排ガス中のNOxを還元・吸着などで除去

燃焼改善でNOxの発生量を低減し、排煙脱硝で最終的に除去するという組み合わせが基本的な考え方です。

SOx(硫黄酸化物)の対策については以下の記事で整理しています

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PuriPuri

化学メーカー勤務のプロセス屋さん。 阪大修士卒。お家の調理担当。

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