Lewis(ルイス)酸・塩基|電子対のやり取りで理解する酸と塩基
酸・塩基の定義といえば、高校の教育ではブレンステッド酸・塩基を学びますが、大学以降の化学ではより一般的な概念としてLewis(ルイス)酸・塩基が広く使われます。
ルイス酸・塩基は、プロトンの授受ではなく、電子対のやり取りで酸塩基を定義します。
この考え方を使うと、配位結合や金属錯体、有機反応まで統一的に理解できます。
ルイス酸・塩基の定義
Lewis(ルイス)の定義
- ルイス酸:電子対受容体
- ルイス塩基:電子対供与体
ルイスの定義では
電子対を受け取る側が酸、与える側が塩基です。

- NH₃:孤立電子対を持つ → ルイス塩基
- BF₃:電子不足 → ルイス酸
図の例では、NH₃の孤立電子対がBF₃に供与され、配位結合が形成されます。
代表的なルイス酸とルイス塩基の例は以下です。
ルイス酸の例
- BF₃
- AlCl₃
- FeCl₃
- 金属イオン(Cu²⁺, Fe³⁺ など)
いずれも空の軌道を持ち、電子対を受け取りやすい物質です。
H+と同じように、:OH–のような電子供与体からの電子供与を受けることができます。
ルイス塩基の例
- NH₃
- H₂O
- Cl⁻
- アミン
- アルケン
基本的には、ブレンステッド酸で塩基とされた物質が塩基に分類されます。
ブレンステッド酸塩基との違い
ブレンステッド酸塩基の定義は以下でした。
- 酸:H⁺供与体
- 塩基:H⁺受容体
つまり、プロトンのやり取りに限定された定義です。
また、ブレンステッド酸の強さは pKa によって定量的に比較されます。
一方、ルイス酸塩基は
- H⁺がなくても成立する
- 電子対のやり取りならすべて対象
となります。
例えばBF₃はH⁺を持たないためブレンステッド酸ではありませんが、
電子対を受け取るため、ルイス酸になります。
ルイス酸の定義の意図
ブレンステッド酸は「H⁺を放出する物質」でしたが、 その本質は電子対を受け取る能力と見ることができます。
ルイスの定義は、この性質を一般化したものです。
配位結合との関係
ルイス酸・塩基反応は、そのまま配位結合の定義になります。(→ 配位結合とは?)

アンモニアからホウ素への矢印は
電子対がNH₃からBF₃へ供与される
ことを意味します。
つまり配位結合とは、
ルイス塩基 → ルイス酸 への電子対供与
そのものです。
金属錯体との関係
金属錯体もルイス酸・塩基で説明できます。
- 金属中心:ルイス酸(空の軌道を持つ)
- 配位子:ルイス塩基(孤立電子対を持つ)

NH₃が電子対を供与し、金属が受け取っています。
つまり、
金属錯体は、ルイス酸塩基相互作用を基礎として形成されます。
配位結合の強さには、
- ルイス酸の強さ
- σ供与の強さ(ルイス塩基の強さ)
- π逆供与
などの複数の要素が関わります。
供与・逆供与に関しては、下記の記事にまとめています。
有機反応例
ルイス酸は有機反応でも頻繁に登場します。
代表例がフリーデル・クラフツ反応です。
AlCl₃がClの電子対を受け取ることで、 R–Cl の結合が強く分極します。

その結果、R⁺(カルボカチオン)が生成し、芳香族求電子置換反応が進行します。
この反応において、AlCl₃はルイス酸、R-Clはルイス塩基として反応に関与しています。
まとめ
- ルイス酸:電子対受容体
- ルイス塩基:電子対供与体
- 配位結合はルイス酸・塩基反応
- 金属錯体もルイス酸・塩基で説明可能
- 有機反応でも重要(フリーデル・クラフツなど)
ルイス酸塩基の考え方を使うと、
- 配位結合
- 金属錯体
- 有機反応
- 供与・逆供与
がすべて統一的に理解できます。
ルイス酸塩基の概念は、有機化学・無機化学・錯体化学をつなぐ共通言語です。


