分子の反応しやすさや色、さらには安定性は、ある2つの分子軌道を見るだけで直感的に理解できます。
それが HOMO と LUMO です。
この2つはフロンティア軌道と呼ばれ、化学反応や物性を決める最前線の軌道です。
この記事では次の3つに関して、HOMO/LUMOの観点から説明します。
これらはすべて HOMO–LUMOギャップ で説明できます。
HOMOとLUMOは、有機化学だけでなく、光化学・材料化学・有機電子材料などでも重要な概念です。
最高被占分子軌道
(電子が入っている一番上)
最低空分子軌道
(電子が入っていない一番下)
HOMOは占有軌道の中で最もエネルギーが高い軌道で、LUMOは空軌道の中で最もエネルギーが低い軌道です。
そのため
HOMOは電子を放出しやすく、
LUMOは電子を受け取りやすい軌道と考えられます。
化学反応では基本的に
ある分子のHOMO → 相手分子のLUMO
へ電子が移動します。
この考え方の基礎は、分子軌道の基本概念に基づいています。
分子軌道法(MO法)入門|結合性軌道・反結合性軌道をわかりやすく解説! - まなびのいずみ |
化学反応を分子同士の HOMOとLUMOの相互作用 によって説明する考え方をフロンティア軌道理論と呼びます。
相互作用の強さは、主に
によって決まります。
フロンティア軌道理論では、反応性は次のように考えます。
この考え方は求核剤・求電子剤の理解にも直結します。
例えば、
芳香族求電子置換反応 (SEAr)では、芳香環が求核剤としてはたらくため、電子供与基がついたベンゼン環が高い反応性を示します。
これは、電子供与基によって芳香環のHOMOが高くなるため、求電子剤のLUMOとの相互作用が強くなるためです。
一方で、
芳香族求核置換反応(SNAr)では、芳香環が求電子剤としてはたらくため、強い電子吸引基がついた芳香環(たとえばシアノ基やパーフルオロ置換)で高い反応性を示します。
電子吸引基によって芳香環のLUMOが低くなり、求核剤のHOMOとの相互作用が強くなるためです。
分子の性質を決める上で重要なのは、HOMOとLUMOのエネルギー差です。
この差を HOMO–LUMOギャップ と呼びます。
HOMOとLUMOの間のエネルギー差
このギャップが小さいほど
逆にギャップが大きいと
となります。
分子が色を持つ理由もHOMOとLUMOで説明できます。
光を吸収するとき、分子内では
HOMO → LUMO
への電子遷移が起きます。
必要な光のエネルギーは
HOMO–LUMOギャップに対応します。
HOMO → LUMOの遷移は紫外光〜可視光範囲の光の吸収において、通常もっとも長波長の光を吸収します。
そのためHOMO-LUMOギャップの大きさが分子の色を決める重要な要素になります。
共役が長くなるほどHOMO-LUMOギャップは小さくなります。
HOMO–LUMOギャップは安定性とも関係します。
一般に
と考えられます。
これは電子が励起されやすいかどうかの違いによります。
また、HOMOが高い場合には求核性が高く、LUMOが低い場合には求電子性が強くなることからもわかります。
※ただし、熱力学的安定性と反応性は必ずしも一致しません。遷移状態のエネルギーや立体要因も重要になります。
まとめると
分子の性質や反応性は、フロンティア軌道(HOMOやLUMO) をみることである程度推測することができる
といえます。
HOMO-LUMOギャップ以外の軌道が反応性や物性に関わることは多くあります。
たとえば、立体化学の制約によりHOMO-1からの反応が優先することもあります。
そして重要なのは
HOMO–LUMOギャップ
HOMOとLUMOを見ることで、分子の反応性だけでなく、
色や安定性といった物性まで統一的に理解できます。
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