第2周期の同核二原子分子では、2p由来の分子軌道のエネルギー順序が分子によって変化します。
特に、
というように、第2周期の途中でエネルギー準位が逆転します。
この順序の違いは、
を決定する重要な要因です。
本記事では N₂・O₂・F₂ を例に、
を、図を中心に整理します。
分子軌道法にまだ不安がある場合は、先に入門記事と結合次数の記事を読むと理解がスムーズです。
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N₂では、2s–2pのエネルギー差が小さいため2s軌道と2p軌道が強く相互作用します。
この相互作用により σ2p が押し上げられ、π2pより高くなります。
O₂では s–p相互作用が弱くなるため、σ2pが本来の順序のまま低くなります。
π*2p に不対電子が2つ残るため、O₂は常磁性を示します。
酸素分子の常磁性は、分子軌道法でなければ説明が難しく、分子軌道法の有効性を示す例の一つです。
F₂では原子番号が大きくなり、2s–2pのエネルギー差がさらに広がります。
そのため s–p間の相互作用はほぼ起こらず、σ2pは低い位置のままです。
反結合性軌道に多く電子が入るため、結合は弱くなります。
ここで3分子を並べてみましょう。
| 分子 | 2p軌道の順序 | 結合次数 | 磁性 |
|---|---|---|---|
| N₂ | π2p → σ2p | 3 | 反磁性 |
| O₂ | σ2p → π2p | 2 | 常磁性 |
| F₂ | σ2p → π2p | 1 | 反磁性 |
つまり、
第2周期の途中で、2p分子軌道のエネルギー準位が逆転する
のです。
なぜこのようなエネルギー順位の逆転が起こるのでしょうか?
エネルギー順位の逆転の理由はs-p軌道間のエネルギー差で説明できます。
分子軌道形成では、エネルギーの近い同じ対称性を持つ軌道同士が相互作用します。
通常の場合(酸素やフッ素)には、s軌道同士やp軌道同士の相互作用のみを考慮すればよいですが、
エネルギー差が小さい窒素ではs-p軌道間での相互作用を考慮する必要
が出てきます。
窒素では2s軌道と2p軌道のエネルギー差が小さいため、σ2s と σ2p が相互作用します。
この相互作用により
σ2s → より安定化
σ2p → 押し上げられる
結果として π2p より σ2p が高くなります。
一方、酸素・フッ素では 2s–2p のエネルギー差が大きく、相互作用が弱いため通常の順序になります。
注意してほしいのは、ここで起きているのは混成軌道の生成ではなく、分子軌道間のエネルギー準位の相互作用ということです。
混成軌道が相互作用して分子軌道を形成すると考えると適切な分子軌道が描けません。
部分的に分子軌道形成に影響を与え、安定化/不安定化に寄与する程度
であることに注意してください。
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第2周期前半と後半でエネルギー準位が逆転することを押さえれば、この系列は体系的に理解できます。
図の電子配置を「結合次数」「磁性」と結びつけて読むことが、理解の最短ルートです。
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