Categories: 有機化学

第2周期同核二原子分子の分子軌道|N₂・O₂・F₂を図でわかりやすく解説

第2周期の同核二原子分子では、2p由来の分子軌道のエネルギー順序が分子によって変化します。

特に、

  • B₂・C₂・N₂ では π2p が σ2p より低い
  • O₂・F₂ では σ2p が π2pより低い

というように、第2周期の途中でエネルギー準位が逆転します。

この順序の違いは、

  • 結合の強さ(結合次数)
  • 磁性(常磁性・反磁性)

を決定する重要な要因です。

本記事では N₂・O₂・F₂ を例に、

  • 2p分子軌道のエネルギー順序
  • 電子の入り方
  • 結合次数と磁性
  • 第2周期前半・後半で順序が逆転する理由(s–p相互作用)

を、図を中心に整理します。

分子軌道法にまだ不安がある場合は、先に入門記事と結合次数の記事を読むと理解がスムーズです。

窒素分子 N₂ の分子軌道

窒素の分子軌道図のポイント

  • π2p が σ2p より低い
  • 反結合性軌道に電子は入らない
  • 結合次数 3(≒三重結合)
  • すべて対電子 → 反磁性

N₂では、2s–2pのエネルギー差が小さいため2s軌道と2p軌道が強く相互作用します。

この相互作用により σ2p が押し上げられ、π2pより高くなります。

酸素分子 O₂ の分子軌道

酸素の分子軌道図のポイント

  • σ2p が π2p より低い
  • π*2p に不対電子が2個
  • 結合次数 2(二重結合)
  • 不対電子 → 常磁性

O₂では s–p相互作用が弱くなるため、σ2pが本来の順序のまま低くなります。

π*2p に不対電子が2つ残るため、O₂は常磁性を示します。

酸素分子の常磁性は、分子軌道法でなければ説明が難しく、分子軌道法の有効性を示す例の一つです。

フッ素分子 F₂ の分子軌道

フッ素の分子軌道図のポイント

  • σ2p が π2p より低い(O₂と同じ順序)
  • π*2p に電子が多い
  • 結合次数 1(単結合)
  • すべて対電子 → 反磁性

F₂では原子番号が大きくなり、2s–2pのエネルギー差がさらに広がります。

そのため s–p間の相互作用はほぼ起こらず、σ2pは低い位置のままです。

反結合性軌道に多く電子が入るため、結合は弱くなります。

N₂でのエネルギー準位の逆転はなぜ起こるのか

ここで3分子を並べてみましょう。

分子2p軌道の順序結合次数磁性
N₂π2p → σ2p3反磁性
O₂σ2p → π2p2常磁性
F₂σ2p → π2p1反磁性
  • N₂までは π2p が低い
  • O₂からは σ2p が低い

つまり、

第2周期の途中で、2p分子軌道のエネルギー準位が逆転する

のです。

なぜこのようなエネルギー順位の逆転が起こるのでしょうか?

s–p軌道間相互作用

エネルギー順位の逆転の理由はs-p軌道間のエネルギー差で説明できます。

分子軌道形成では、エネルギーの近い同じ対称性を持つ軌道同士が相互作用します。

通常の場合(酸素やフッ素)には、s軌道同士やp軌道同士の相互作用のみを考慮すればよいですが、

エネルギー差が小さい窒素ではs-p軌道間での相互作用を考慮する必要

が出てきます。

窒素では2s軌道と2p軌道のエネルギー差が小さいため、σ2s と σ2p が相互作用します。

この相互作用により

σ2s → より安定化
σ2p → 押し上げられる

結果として π2p より σ2p が高くなります。

一方、酸素・フッ素では 2s–2p のエネルギー差が大きく、相互作用が弱いため通常の順序になります。

注意

注意してほしいのは、ここで起きているのは混成軌道の生成ではなく、分子軌道間のエネルギー準位の相互作用ということです。

混成軌道が相互作用して分子軌道を形成すると考えると適切な分子軌道が描けません。

部分的に分子軌道形成に影響を与え、安定化/不安定化に寄与する程度

であることに注意してください。

まとめ

  • 第2周期同核二原子分子では2p分子軌道の順序が途中で逆転する
  • B₂・C₂・N₂:π2p が σ2p より低い(s–p相互作用あり)
  • O₂・F₂:σ2p が π2p より低い(相互作用なし)
  • 不対電子の有無から磁性を判断できる
  • 結合次数は反結合性軌道の占有で決まる

第2周期前半と後半でエネルギー準位が逆転することを押さえれば、この系列は体系的に理解できます。

図の電子配置を「結合次数」「磁性」と結びつけて読むことが、理解の最短ルートです。

\ 最新情報をチェック /

PuriPuri

化学メーカー勤務のプロセス屋さん。 阪大修士卒。お家の調理担当。

This website uses cookies.