分子軌道法(MO法)入門|結合性軌道・反結合性軌道をわかりやすく解説!
「分子軌道法(MO法)がよくわからない」
「結合性軌道と反結合性軌道の違いが曖昧」
そんな人向けに、分子軌道法の基礎をできるだけ直感的に解説します。
この記事を読むと:
- 分子軌道法の考え方
- 結合性・反結合性軌道の意味
- σ軌道とπ軌道の違い
- 結合次数の考え方
が理解できます。
分子軌道法(MO法)とは?
分子軌道法 (ざっくり)
電子は分子全体に広がった軌道に入ると考える理論
電子は分子全体に非局在化している、と考えるのがMO法です。
ちょっと詳しく
分子軌道法では、
- 原子軌道同士が重なる
- それらが組み合わさる
- 新しい分子軌道ができる
と考えます。
そして電子は、
- 低エネルギー軌道から順に入る
- パウリの排他原理に従う
- フント則に従う
という量子力学ルールに基づいて配置されます。
つまりMO法は、
原子軌道で使っていた電子配置のルールを、分子全体に拡張して考える方法
です。
なぜ分子軌道法を学ぶのか?
分子軌道法は、
- 分子の安定性
- 磁性
- 共役・芳香族性
を理解する基礎になります。
大学試験や院試でも頻出の重要テーマです。
分子軌道と原子軌道の関係
原子軌道の線形結合(LCAO)
分子軌道は
原子軌道の線形結合(LCAO)
で作られます。
イメージは波の重なりです。
- 波の足し算
- 波の引き算
によって新しい軌道が生まれます。
この結果できるのが、
- 結合性軌道
- 反結合性軌道
です。
結合性軌道と反結合性軌道
結合性軌道とは?
- 同位相で重なる
- 核間の電子密度が増える
- エネルギーが下がる
- 分子を安定化させる
➢ 結合を作る軌道
反結合性軌道とは?
- 逆位相で重なる
- 核間に節ができる
- エネルギーが上がる
- 分子を不安定化させる
➢ 結合を弱める軌道

σ軌道とπ軌道の違い
σ(シグマ)軌道
- 核を結ぶ軸方向に重なる
- 単結合の基本
- 回転しても結合が維持される
π(パイ)軌道
- 横方向に重なる
- 二重・三重結合に関与
- 回転で結合が崩れる
分子軌道図の描き方【3ステップ】
分子軌道(MO)図は、基本ルールに沿えば自分で描けます。
やることは「原子軌道を組み合わせて電子を入れる」だけです。

Step 1. 価電子軌道を書き出し、エネルギー順を確認する
まず各原子の価電子軌道を確認します。
例:
- H:1s
- N:2s・2p
- O:2s・2p
ポイント:
- 内核軌道は結合にほぼ関与しないため、希ガス配置として省略
- 一般に s軌道は低エネルギー、p軌道は高エネルギー
- エネルギーが近い軌道同士ほど相互作用しやすい
➢ MO法では「価電子だけを見る」が基本です。
Step 2. 軌道を組み合わせて分子軌道を作る
向きが合う軌道同士が相互作用します。
- 正面衝突 → σ軌道
- 横方向の重なり → π軌道
相互作用すると必ず:
- 結合性軌道(低エネルギー)
- 反結合性軌道(高エネルギー)
のペアが生まれます。
➢ 原子軌道2つ → 分子軌道2つ(数は保存)
Step 3. 電子を下から順に配置する
電子配置は原子と同じルールです。
- 低エネルギーから入れる
- パウリの排他原理
- フントの規則
ここまでできれば:
- 結合次数
- 分子の安定性
- 常磁性/反磁性
まで判断できます。
結合次数の求め方
結合次数は
(結合性電子数 − 反結合性電子数)÷2
で求めます。
結合次数の意味
- 0:結合しない
- 1:単結合
- 2:二重結合
- 3:三重結合
結合次数が大きいほど、その原子間の結合は強くなります。
例1:水素分子 H₂

1s軌道同士が重なり、
- σ1s(結合性)
- σ*1s(反結合性)
ができます。
電子2個はσ1sに入るため、
結合次数 = 1
→ 安定な共有結合になります。
例2: 酸素分子 O₂

O₂では、
π*軌道に不対電子が2個残ります。
これにより
酸素は常磁性を示す
ことが説明できます。
これはVB法では説明が難しく、
MO法の代表的成功例です。
原子価結合法(VB法)との違いと使い分け
MO法とVB法は、分子中の電子の捉え方が異なります。
MO法は電子を分子全体に広がったものとして扱うのに対し、
VB法は電子を「結合と結合の間に局在化するもの」として扱います。
VB法の利点は、
電子がどの結合に関与しているかをイメージしやすいことです。
そのため、
- 反応機構
- 電子の移動
- 結合の生成・切断
といった「化学反応の議論」では、
VB法のほうが直感的に理解しやすい場合が多くあります。
一方MO法は、
- 磁性
- 共役系の安定性
- 分子全体の電子状態
の説明に優れています。
実際の化学では、
反応性はVB的に、電子状態はMO的に考える
という使い分けがよく行われます。
まとめ
分子軌道法の要点:
- 電子は分子全体に広がって存在する
- 原子軌道の線形結合で分子軌道ができる
- 結合性軌道と反結合性軌道が同時に生じる
- 結合次数で分子の安定性がわかる
- 内殻電子は通常省略し、価電子のみを考える
また、
- 反応性を考えるときはVB法
- 電子状態や磁性を考えるときはMO法
と使い分けると理解しやすくなります。
まずは
「軌道は波の足し算と引き算」
と捉えれば十分です。
ここを理解すると、
- ヒュッケル法
- フロンティア軌道理論
- 芳香族性理論
の理解が一気に進みます。



