SN1・SN2・E1・E2反応の見分け方|基質と試薬から反応を予測する方法

有機化学では、同じハロゲン化アルキルでも条件によって

のいずれかが起こります。

しかし、反応条件は似ていることも多く、どの反応が起こるのか判断するのは簡単ではありません。

SN1・SN2・E1・E2反応の見分け方は、「基質」と「試薬」の組み合わせで考えるのが基本です。

この記事では、基質と試薬から反応を予測する方法を整理します。

SN1/SN2/E1/E2の判定表

まず、判定表をみてみましょう。

脱離反応と置換反応の選択性は、次の表で大まかに判断できます。

基質求核性 大
塩基性 小
(I⁻, Br⁻, RS⁻など)
求核性 大
塩基性 大
(OHなど)
求核性 小
塩基性 大
(tBuO, LDAなど)
求核性 小
塩基性 小
(H₂O, ROHなど)
メチルSN2SN2反応しにくい反応しにくい
第一級SN2SN2E2反応しにくい
第二級SN2E2E2SN1/E1
第三級SN1E2E2SN1/E1

まずは

  • メチル・第一級 → SN2しやすい
  • 第二級 → 条件次第
  • 第三級 → SN2できない

と覚えると整理しやすくなります。

なお、これらの反応は実際には競合するため、置換反応が主経路であっても脱離生成物が副生成物として得られることが多くあります。

置換反応と脱離反応の違い

SN1反応・SN2反応は置換反応であり、脱離基が別の原子や官能基に置き換わります。

一方、E1反応・E2反応は脱離反応であり、脱離基とβ位水素が失われてアルケンを与えます。

置換反応と脱離反応の違い

置換反応では、求核剤が炭素へ求核攻撃することで反応が進行します。

一方、脱離反応では、塩基がβ位水素を引き抜くことで反応が進行します。

選択性を決める3つの要因

SN1・SN2・E1・E2の選択性は主に

  • 基質の立体障害
  • 求核剤の強さ
  • 塩基の強さ

で決まります。

さらに溶媒や温度も影響します

まず基質を確認し、その後に試薬を判断すると反応を予測しやすくなります。

基質による選択性

メチル基

メチル基では立体障害がほとんどありません。

そのため求核剤による背面攻撃が起こりやすく、SN2反応が優先します。

また、β位炭素が存在しないため、脱離反応は起こりません。

第一級基質

第一級基質ではSN2反応が起こりやすくなります。

ただし強塩基を用いるとE2反応も競合し得ます。

特にtBuOKのようなかさ高い塩基ではE2反応が優先することがあります。

第二級基質

第二級基質は最も判断が難しい基質です。

  • 強求核剤 → SN2
  • 強塩基 → E2
  • 水やアルコール → SN1/E1

のように条件によって反応経路が変化します。

第三級基質

第三級基質では立体障害が大きいため、SN2反応はほとんど起こりません。

そのため

  • 強塩基 → E2
  • 弱求核剤・弱塩基 → SN1/E1

が主な反応経路になります。

試薬による選択性

強求核剤・弱塩基

求核性が高く弱い塩基は求核攻撃を起こしやすいため、SN2反応を促進します。

強求核剤・弱塩基の例

  • I
  • Br
  • RS

強塩基・強求核剤

強塩基はβ位水素を引き抜きやすいため、E2反応を促進します。

特に第二級・第三級基質ではE2反応が優勢になります。

強塩基・強求核剤の例

  • OH
  • MeO
  • EtO

強塩基・弱求核剤

こちらも強塩基のためβ水素を引き抜きやすく、E2が優勢です。

ただし、求核性が弱いため、SN2が抑制されます。

特にtBuO⁻のようなかさ高い塩基は、炭素への求核攻撃が起こりにくいため、第一級基質でもE2反応を与えることがあります。

強塩基・弱求核剤の例

  • tBuOK
  • LDA (LiNiPr₂)

弱求核剤・弱塩基

これらの条件ではカルボカチオンを経由するSN1反応やE1反応が起こりやすくなります。

弱求核剤・弱塩基の例

  • H₂O
  • MeOH
  • EtOH

SN1とE1はどうやって決まる?

SN1反応とE1反応はどちらもカルボカチオンを経由します。

そのため同じ条件で競合することがよくあります。

一般に

  • 低温ではSN1が有利
  • 高温ではE1が有利

となります。

これは脱離反応の方がエントロピー増大の効果を受けやすいためです。

第二級基質で考える選択性

第二級基質では条件によって反応が変化します。

2-ブロモブタンの例を見てみましょう。

2-ブロモブタンの反応選択

EtOHは弱求核剤・弱塩基であるため、カルボカチオンを経由するSN1/E1経路が進行しやすくなります。

第二級基質では、まず試薬が求核剤なのか塩基なのかを考えることが重要です。

判断の流れ

反応を予測するときは次の順で考えます。

  1. 基質はメチル・第一級・第二級・第三級のどれか
  2. 試薬は強求核剤か強塩基か
  3. 水やアルコールなどの弱求核剤・弱塩基か
  4. 加熱しているか

特に第二級基質では試薬の影響が大きいため、条件を丁寧に確認することが重要です。

まとめ

SN1・SN2・E1・E2の選択性は、まず基質を見て、その後に試薬を確認すると判断しやすくなります。

  • メチル・第一級 → SN2が基本
  • 第二級 → 条件次第
  • 第三級 → E2またはSN1/E1

さらに、

  • 強求核剤 → SN2
  • 強塩基 → E2
  • 弱求核剤・弱塩基 → SN1/E1

と考えると、多くの反応を予測できます。

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